日頃、Web制作に携わっていながら自分の制作したWebサイトがどの程度、クライアント(自社のサービスでもそうだが)の役に立っているのか、具体的に言うとどの程度の売り上げに貢献しているのか、非常に気になっていた。
しかし、これまでにもサイトのアクセス解析に関する本は読んできたが、イマイチどの数値を見て、どのようにサイトを改善していくべきなのか、よく分からなかった。
そんな状況でたまたま目にしたブログで紹介されていたこの本に出会った。

そのブログでは、「どのように数値をデザインに活かせばいいのか分からない人におすすめ」と書いてあった。まさに自分のことだと思った。
ビジネスとビジネスにおけるWebサイトの数値の関係を理解したいと思っていた自分にピッタリの本ではないか。
そう思ってこの本を手に取った。

「スタートアップ」について

本書が解説の前提としている「スタートアップ」について、一度確認しておきたい。

僕は「スタートアップ」という言葉は目にしたことはあったが、「ベンチャー企業がβ版のままリリースしているサービス?」みたいな意味かと思っていた。

本書に記載されているスタートアップの意味は

スタートアップとは、スケーラブルで再現性のある利益を生み出すビジネスモデルを探求する一時的な組織である。

・・・とのこと。
分かるような分からないような説明だが、インターネットを介したオンラインのサービスでなくても上記を目的としている場合はスタートアップと呼ぶ。
本書は当然だが、オンラインのサービスを前提としている。

本の概要

この本では、スタートアップが成長するのに必要な「計測すべき数値」を詳しく解説している。
この「計測すべき数値」はどういった数値を指すかというと、「行動を変える数値」をいう。ビジネスを良い状態に変えていくための「次の一手」を導き出すのに役立つ数値だ。

もちろん数値の解説のみならず、6つのビジネスモデルを例に挙げている。
この本で紹介されているビジネスモデルは以下。

  • ECサイト
  • SaaS(オンラインでユーザーにアプリケーションを提供しているサービス)
  • 無料モバイルアプリ
  • メディアサイト
  • ユーザー制作コンテンツ(twitter、facebookなど)
  • ツーサイドマーケットプレイス(ebay、Amazonマーケットプレイスなど)

それぞれのモデルについて詳細な解説が実際の企業の実例を含めて書かれており、かなりのボリュームになっている。

各部で書かれていること

各部の情報量が多く、なかなか短い文章で紹介するのは難しいのだけど、以下にまとめる。

第1部 自分にウソをつかない

いきなり1章の見出しからインパクトが大きいが言いたいことは・・・起業家はみなウソつきで、自分のウソに酔ったままビジネスを地獄に追い込んでいく。
そうならないために必要なのが、データによる裏付けであるということ。
裏付けのための数値=「優れた指標」とはどのような数値か?ということも解説している。

ここで「虚栄の指標」として紹介されている指標の中に、よく指標として考えられるページビューやユニーク訪問者数が挙げられているが、それぞれの指標がビジネスの成果に直接結びついているかどうかが重要であるとのこと。

指標に関する説明のほかに、分析手法も紹介。

第2部 今すぐに適切な指標を見つける

データ分析のためのフレームワークと6つのビジネスモデルそれぞれに相応しい指標の具体例、またビジネスのステージを5つに分けて、各ステージにおける課題の見つけ方とその課題に対する解決方法の考え方を紹介。
内容のボリューム的にこの第2部が最もページ数を割いて解説している。

第3部 評価基準

第2部から登場した5つのステージにおける指標をどのように評価し、ビジネスが次のステージに上がったのかを判断するための考え方を解説している。

リリースしたビジネスの課題を早急に見つけて解決していくことで、拡大していくスタートアップだが、焦ってステージを進めるのではなく、適切なタイミングの見極めが必要であると書いてある。

第4部 リーンアナリティクスを導入する

ここまで解説してきたリーンアナリティクスの手法を、エンタープライズ市場に向けて利用することについて解説。
(エンタープライズ市場とは、比較的規模の大きな企業を対象とした市場のこと。)

これまでの部で解説してきた手法は主にB2Cのビジネスを対象に検討されてきたものだ。
スタートアップでは顧客と直接接する時間は、製品・サービスの利用実態をリサーチするためのインタビュー程度で、あとは製品やサービスを素早く改善していくことを主体としている。

エンタープライズの場合は、通常企業が行っているB2Bの対面営業のような、時間をかけて大きな額の契約を成立させるアプローチを主体とすることが大きな違いであるといえる。

こういった違いを持った市場において、どのようにリーンアナリティクスの手法を用いるかを第3部では検討している。

そのほかに組織内企業における事業の進め方、注意点などが記載してある。
その中で意外だったことがことは、企業内の政治的な仕組みを考慮することを説明していることである。
僕の持っている海外の企業のイメージは、全てを合理性のみで判断し、政治的な思惑はあまり大きな決定には影響しないものだと思っていたので驚いた。
日本でも海外でも、大勢の人間が集まって組織を形成すると、政治的な事情に配慮しなければならなくなるものか、と思った。

以上が各部の内容を簡単にまとめたものだ。

この本で紹介されている手法をどう生かすか

リーンアナリティクスの手法を利用するには、データ分析するために、見るべき指標を決定することから始まり、自分のビジネスモデル、おかれているステージをきちんと把握しておくことが重要であると分かった。実際に自分が業務で行う際には、この点をしっかり見極めていきたい。
気づいた間違いはすぐに正して、ビジネスが向かうべき方向を調整していくことが必要だ。


おすすめの記事