最近「実践行動経済学 – 健康、富、幸福への聡明な選択」という本を読んでいます。
「人は必ずしも合理的に意思決定していない」ということを数字ともとに研究する経済学に、人間の心理を研究に取り入れている行動心理学に関してまとめた本なのですが、もともと英語で書かれた本です。

原題は「Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth and Happiness」です。
この原題をみて、「この原題の日本語訳だったら、この本を買っていなかったんじゃないかな・・・」と思いました。

そして、英語版の表紙の装丁を見ても同じく「自分が英語圏の生まれで、日頃からこういう装丁に慣れていないと買うことはないかもしれない・・・」と感じました。

この本の英語版、日本語版のタイトル・装丁(本のデザイン)の比較して、買ってほしい人(ターゲット)に対して響くタイトル、デザインをしないと買ってもらえるものも買ってもらえないなと実感しました。
なぜそう感じたのかを解説していきます。

原題、日本語版のタイトル比較

まず、英語版と日本語版のタイトルを比較します。

原題(英語版)タイトル「Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth and Happiness」

このタイトルは本書で解説されている、“注意や合図のために人の横腹を特にひじでやさしく押したり、軽く突いたりすること”を意味する「Nudge(ナッジ)」そのままです。
英語圏の人だとこの単語を目にするだけで意味が分かるのではないかと思います。

サブタイトル「Improving Decisions About Health, Wealth and Happiness」は「健康、富、幸福に関する決定を改善すること」という意味です。
このサブタイトルだと、本書で解説されていることのイメージが大体掴めます。

このように考えると、このタイトルだけでもパッと見て言葉が理解できるのであれば、十分に興味を引くことができるタイトルなんじゃないかということです。(少なくとも、僕は興味をひかれるタイトルだと感じます。)

日本語版タイトル「実践 行動経済学 – 健康、富、幸福への聡明な選択」

こちらはうって変わって、英語版のタイトル「Nudge」と「実践 行動経済学」とが差し替わっています。
おそらく「Nudge」の意味を日本語の一つの単語で表すことが難しいため他の単語に差し替えるという方針になったのかと思います。

言葉の順が逆になるのですが「実践 行動経済学」の「行動経済学」という言葉は、本書の内容を一言でいうと行動経済学という括りにするのが、内容を一言で伝えるには一番分かりやすいという結論になったのではないかと思います。

なぜ「実践」をタイトルに付けたのか、ですがおそらく“実践”とつけることで“すぐに役に立つ”ことを印象付ける狙いがあったのではないかと思います。“実践”という言葉からは、すぐに理解できて、使える(役に立つ)というイメージがあります。一言で言えば「実践とつければ売れそう」ということです。

英語の原題と比べると日本語版のタイトルは、より意味を噛み砕いて、実用的なイメージを与えるタイトルになっています。

英語版、日本語版の装丁(本自体のデザイン)の比較

次は装丁の比較です。※あくまで僕の見立てであり、デザイナーに確認したわけではないです。

「実践行動経済学」英語版・日本語版の装丁比較

英語版の装丁

英語版の装丁の特徴をまとめると以下になります。
日本の書店に並ぶ本と比べると、非常にシンプルです。
このシンプルさは他の外国の本の装丁にも見られるので、デザインの文化的な違いが現れているのでしょうね。

  • 「Nudge」の言葉の意味である「横腹を特にひじでやさしく押したり、軽く突いたりすること」を「nudge」の文字で表現。「g」の文字下部の部分が「u」を突っついている。
  • 「u」が白い文字なのは、突っつかれて動いたことを強調するため。
  • 背景色の赤ですが、おそらく書店の棚に並んだ時に目を引くため。

日本語版の装丁

日本語版の装丁の特徴は以下です。
一言で言うと、タイトルと同様に「取っ付きやすさを強調したデザイン」になった印象です。

  • 日本語タイトルから「Nudge」が消え、扱いが小さくなったため英語版の矢印のモチーフはなくなった。
  • 背景色は白に(「学問的な重み」を感じさせるため?)
  • アニメ的ではないイラストを使って親しみやすさを感じさせる。
  • いろんな人の顔のイラストで、「いろんな人が知らず知らずのうちにやっていること」を示唆

翻訳本はタイトルやデザインも地域性に合わせて変更されている

「実践行動経済学」の英語版、日本語版のタイトル・デザインを比較して、その違いや変更箇所の狙いなどを考察してまとめてきました。

海外の本、特に学術的な内容の本の場合、単にそのままのテイストのデザインにしてしまうと取っ付きにくい印象になってしまうようです。そこで工夫しながらタイトルやデザインを変更していった印象ですね。

また装丁にしてもそうですが、街の看板なども日本と英語圏のデザインを比べると、感じる印象は全然違います。

このように売る先で受け入れられるものを調査して、売れるようにアレンジすることが、重要です。
「良いものであれば、ほっといても売れる」なんてことはありません。

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